千鶴さん。
千鶴さん。
千鶴さん。
千鶴さんはこの話を知っていた。
だから初めて会った日、“お前に興味がある” と言ったんだ。
海で好きな人がいるのか聞かれたのもきっとこの話があったから。
おかしいとは思ったんだ。
いきなりなんの取り柄もなく、目立つ訳でもないあたしがTrustのソファー席に座れるなんて。
それでもいつしかそれが当たり前になりおかしいなんて思いはなくなっていった。
千鶴さんの隣に居られるのが嬉しいって思いだけだった。
きっと千鶴さんにとって出会った日から今日までの日々は自分の婚約者を見定める期間に過ぎなくて⋯。
理解なんてしたくないのに一つ一つのピースがハマっていく。
千鶴さんがあたしに構う理由も、時に意味深な事を言う理由も、全てが繋がっていく。



