君ありて幸福 【完】





目の前が真っ暗になるのは今日何度目だろう。






「あの有馬と手を組めれば家は将来安定だ。⋯手を組める程には会社を大きくして、もう何年も前から親交を深めて⋯、見合いの話も何度も持ち掛けて⋯やっと⋯、やっと婚約とビジネスパートナーの話が纏まったという時にっ⋯!」


「⋯⋯」


「婚約を条件に一度纏まった話を一方的に白紙に戻す代わりにビジネスとしては約束通り手を組むと説明はあったが⋯それだけじゃダメなんだ」


「⋯⋯」

「お前が嫁ぎ、あの家と強固な関係性を築き、将来的にはあの家に影響力を持つくらいの⋯⋯⋯、」






父の話はとても気持ちが悪く、吐き気さえ覚えた。

怖い程の権力への執着。



仕事人間だと思っていた父はそんな生易しいものでなく、仕事に、会社に、権力に取り憑かれていると言える程だった。





でもそんなものは頭の片隅で思っていた事で、

今のあたしはそれどころではない。