お父さんの事を睨む。
お父さんにそんな目を向けたのは初めてかもしれない。
だけどそんな抵抗はお父さんの前では意味を成さないんだ。
「何だ、その目は」
鋭い眼光で睨み返されてしまった。
それと同時に足を組み替えたお父さんはフゥ、とため息を吐き出した。
「アイツと別れた時、何のためにお前を引き取ったと思う」
「⋯え、⋯」
「まだ手のかかるお前を⋯わざわざ引き取った理由だよ」
「⋯⋯⋯」
「こういう時の為だろう」
「⋯⋯っ」
「お前はこの家に生まれたんだ。この家の為になる事をしろ」
「お父、さん⋯」
「お前は⋯⋯」
「お父さん⋯、」
「ただの道具だ」
─────目の前が真っ暗になった。
お父さんの言葉が何度も何度も頭の中で繰り返されてその度に胸が痛い。
心の中が空っぽになった様に、心に違和感を感じる。
とても幸せな気分ではないのに、感覚はどこかフワフワとしている。
─────道具。
あたしはただの道具なのか。
父の、家の、会社の、道具。



