君ありて幸福 【完】




「え⋯⋯?」



お父さんから冷た過ぎる視線を向けられ寒気さえ感じながらも瞬時にお父さんの言葉を理解しようとしたあたしから出た言葉はそんな間抜けなもので。

そんなあたしにお父さんは眉間に皺を深く刻んだけれど、眉を寄せたいのはあたしの方だ。



だってお父さんが怒る理由も、言葉の意味も何もわからない。

いきなり何をしてくれたんだ?と言われても答えようもない。






「どういう事?」



そう言ったあたしにお父さんは深くため息を吐いた。




そしてあたしはそう聞いた事を後悔した。



聞かないなんて選択肢はないし、ずっと知らないままでいるという事も出来ないのはわかっているけど、出来る事なら知らないままでいたかったと後悔する。








「お前には婚約の話があったんだ。だがそれが今日急に白紙になった」


「⋯⋯こん、やく⋯?」


「なぁ、雪乃。お前は一体何をしたんだ?」