「え⋯、」
一瞬何を言ったのかわからなかった。
「婚約の話は断る」
思わず上げた顔はきっと物凄く間抜けな表情だと思う。
だけどそんなあたしの顔を笑うでもなく真剣な表情で見つめる千鶴さんはもう一度そう言った。
「断る⋯?」
「ああ」
「婚約の話を⋯ですか⋯?」
「そうだ」
聞き間違いなんかじゃなく確かに千鶴さんは婚約を断ると言っている。
断る⋯
断る⋯⋯
断る⋯⋯⋯
「っ!!」
驚き過ぎて声も出ない。
だって今、ほんの数秒前千鶴さんに婚約者がいる事が決定的になって泣きそうになってたんだ。
だけど今目の前にいる千鶴さんは婚約の話を断ると言っていて⋯、
ああダメだ。頭がパンクしそう。
なんで、どうして?って疑問と、抑えられない喜び。
喜ぶなんて最低かもしれないけどどうしたって嬉しいと思わずにはいられないこの事態にまず口から出たのは
「⋯⋯⋯な、んで?」
という疑問だった。



