「何で知ってる」
静かなこの場所に嫌なほど響く千鶴さんの低い声。
いつもより数倍低いその声に体がビクッと反応したのと同時にやってしまったと瞬時に悟った。
シンと静かな空間に怒らせてしまったと泣きたくなる。
よく考えてみれば婚約者なんてとてもプライベートな話でそれを無関係なあたしなんかが知っていれば嫌な気持ちになるのも当然だ。
それを詮索しようとしていたなんて⋯あたし最低だ。
「ご、ごめんなさい⋯」
俯いて謝るあたしに千鶴さんは気まずそうに視線を逸らした後、もう一度あたしの方へと目を向ける。
「怒ってる訳じゃない。ただ知っていた事に驚いただけだ」
さっきよりも優しくなった声。
それに少しだけ安心した。
「だからそんな顔するな」
「はい⋯」
「で、どうしてそんな話を雪乃が知ってんだ?誰かに聞いたか」
「えっと⋯、」
誰に聞いたかなんて言ってもいいんだろうか。
けど真っ直ぐこっちを見る千鶴さんに嘘はつけない。
「あの⋯、住田さんに⋯そういう様な話を聞いて⋯それで⋯」
素直にそう言うと「チッ」と千鶴さんが舌打ちをした。



