君ありて幸福 【完】



走り始めてから五分。




「っぎゃっ⋯!」



最初こそあまりスピードがなかったものの徐々に速度を上げて道路を颯爽と走るバイクにあたしの心臓はさっきとは違う意味でバクバクだった。



法定速度も守り、あたしに気を使ってかそこまでスピードも出ていないはずなのに初めての感覚に恐怖や驚きを感じ「ぎゃー」とか「うわっ」という言葉にならない声を発するあたしに千鶴さんはクスクスと笑っているのがわかった。


実際に表情や声は聞こえないけれどお腹の辺りに回した手から伝わる振動がそれを証明しているんだ。





「はやいー⋯!」


さっきも言った通り速度はそんなに速くはない。

けど物凄く大きな音で聞こえる風の音、
下ろした髪を靡かせる風の強さに物凄いスピードで走っているんじゃないかと錯覚してしまう。




だけど。



「大丈夫か?」

「っ怖いですっ⋯けど⋯!」

「けど?」

「すごく、気持ちいいですっ⋯!」



とても気持ちいいとも思ったんだ。