「あ、⋯何ですか?」
「いや、先に言えよ」
「いやいや千鶴さんの方が先に言ってください⋯」
ちょうど喋り出したタイミングが重なってしまった為に流れる気まずい空気。
こんなタイミングで重なる事ってある?
笑ってしまうような戸惑ってしまうような出来事に視線をうろちょろとさ迷わせていると千鶴さんが先に言葉の続きを告げた。
「少し出ないか」
「出る?」
「ああ。嫌ならいいけど連れて行きたいとこがあるんだよ」
「連れて行きたいところ⋯?」
「ああ。一時間くらいなんだけど出れるか?」
「あたしは全然大丈夫ですよ」
「なら行くぞ」
もちろん即答で返事をしたけど千鶴さんが連れて行きたいところってどこだろうと不思議に思っているとすぐに引かれた手。
紛れもなく千鶴さんの手があたしの手に触れた。
途端にドキドキとうるさくなる心臓。
ああ、ヤバいな。
手を握られただけなのに嬉しさと緊張でどうにかなりそうだ。



