「⋯それともう一つあさみに聞きたいことがあるんだけど⋯」



これは言おうかどうか迷っていた。

言ったらあさみに嫌われてしまうかもしれない。

あさみの口から拒絶の言葉は聞きたくなかったから。


だけど千鶴さんに直接話を聞くと決めたならこれもあさみに聞いておかないといけないことだと思う。




「なに?雪乃」

「うん、⋯あのね」


なかなか話を切り出さないあたしにあさみが首を傾げる。

あたしの手には汗が滲んでいる。



怖い。


だけどちゃんと聞いておきたいんだ。




「あのね、あさみは⋯」

「うん」

「あさみは、決められた人がいる千鶴さんを好きでいるあたしの事、どう思ってるのかなって⋯」

「⋯え?」

「千鶴さんには婚約者がいるかもしれないのに、千鶴さんが許してくれるまでそばにいたいって思ってるあたしの事⋯軽蔑してるんじゃないかって⋯⋯思って⋯⋯」




あたしの方から“軽蔑”なんて言葉を出すのは卑怯かもしれない。

だけどどうしても怖くて。

あさみの目を見られない自分がいた。