「心配⋯掛けたい訳じゃないんてす」
「ああ」
「ボケッとしてるのは自分でも自覚してます」
「ああ」
「すげー顔してるのも⋯」
「ああ」
当たり前に返事をする昴さんに文句を言いたいけど実際にあたしの顔は不安と嫉妬と恐怖とモヤモヤですごい事になってるんだろう。
本当に色んな感情が渦巻いているから。
「でも、本人にそれを聞く勇気はないんです」
「⋯⋯」
「モヤモヤが無くなってほしいと思うのに、怖いんです」
「⋯そうか」
「はい⋯」
昴さんの言う通り婚約者の事を聞いた方が良いのかもしれない。
その方がモヤモヤは無くなるのかもしれない。
だけどその存在が明確になってしまうのが怖い。
「だけど、昴さんの言葉を聞いて聞いた方がいいって気持ちの方が大きくなりました。まだ聞きたくない、怖いって気持ちもありますけど」
「おう」
「いきなりこんな話してすみません。だけど話聞いてくれてありがとうございました。」
まだ答えは出ない。
だけど少しだけ心境の変化が起こった。
「お前も恋する乙女ってやつだな。実際はんな可愛いもんじゃねーけど」
意地悪に笑う昴さんだけどその表情は心做しかいつもより優しかった。



