君ありて幸福 【完】


「お前最近ボケッとし過ぎなんだよ」

「それは⋯、すみません」

「今もボケッとチヅの方見てただろ、すっげー間抜け面で」

「間抜け面って⋯!ただ見てただけなんですけど。ってあれ誰なんですか?」




そう言いながら千鶴さんと書類のようなものを見ながら話す男の人を指さす。





「あー、あれな。あの人はここの店長みたいな人」


指さした方を見て答えてくれた昴さんに「店長?」と首を傾げる。


「ここは有馬が経営してんだろ?んで経営を任されてんのがチヅ。最終的な責任者はチヅだけど実際に現場に出て店を回してんのはあの人って事。色々店の事とか話し合ってんじゃねぇの」

「へぇ⋯」


まだ高校生なのにお家の仕事を手伝っている千鶴さん。
自分より全然年上の人と話をしているその横顔は真剣そのものだ。


そんな千鶴さんを凄いなぁと思うと同時に、



「千鶴さんって遠い人ですよね⋯」



手を伸ばしても届かない人だとも思った。