君ありて幸福 【完】





それからさらに一週間が過ぎたある日。



あさみは青木くんとデート、楓也さんは用事があるとかでTrustに来れなくて千鶴さんと昴さんとあたしという三人でソファー席に居た時。






「ちょっと席外す」




普段人が登ってくる事がない二階のソファー席にお店の従業員の男の人が登ってきて千鶴さんに何かを伝えるとそう言って千鶴さんは席を立ち一階へと降りて行った。




「はい」と返事をしながらも階段を降りて行く千鶴さんを見ていると、一階に降りた千鶴さんは音楽があまり届かなそうな、ここからは見えるけどフロアからは死角になっている場所で見たことのない人と話をしている様子。






「おい」





「何の話をしてるのかなー?」なんてかるーい感じでその様子を見ていたあたしに届いた声。





「おい、真面目女」


「⋯⋯」


「無視か?地味子」


「⋯⋯」


「おい!お前だよ、お、ま、え!」





受け入れ難い呼び名で呼ぶ昴さんに無視を決め込んでいると頭をガシッと掴まれてそのままグルンと頭を回転させられた。



目の前には不機嫌な昴さんの顔。




「真面目女とか地味子とかっていう名前じゃないんですけど」


「うるせー」


負けじとあたしも不機嫌さを全面に出すけれど昴さんには関係ないみたい。