君ありて幸福 【完】




そして考えてしまえば当然のこと、苦しくなる。


切なくなる。悲しくなる。辛くなる。



そう思ったところで千鶴さんには関係ないし、どうなるってわけではないし、考えなければいいじゃん。ともなるかもしれないけど、あたしだって出来ることなら婚約者がいる現実からなんて逃げたい。




だけど千鶴さんの事を考えていたら必然的に婚約者の事も考えてしまうから逃げようもない。




そもそも逃げるとか逃げないとかの問題でもないとも思うし、婚約者がいる人に想いを寄せる事は許されるのか疑問でもある。





千鶴さんから別れを告げられるまでは知らないフリをする。なんてただの強がり。




本当は知らないフリなんて出来なくて、

婚約者の事を考えないなんて出来なくて。




千鶴さんに会えば嬉しいって気持ちと切ない気持ちが入り交じるんだ。






「─────⋯⋯聞いてるか?」


「えっ、!あ⋯すみません、ちょっとぼーっとしてて」


「最近多くないか?」


「そうですか?ちょっと今授業が難しいのでそのせいかもしれないです⋯」




こんな会話も増えた。

千鶴さんと話をしててもいつの間にか頭の中は婚約者の事でいっぱいになっているんだ。