「行くぞ雪乃」
「えっ、」
俯いていたから気づかなかったけどいつの間にか女の人は側からいなくなっていて千鶴さんがあたしの手を引いた。
手を繋ぎながら賑やかな街を歩いて行く。
ぎゅっと握られている訳でもないし、どちらかと言えば手を引かれていると言った方が正しい気もするけど、触れた手から伝わる温もりに鼓動が早くなっているのが自分でもわかった。
好きだなぁと、
婚約者がいる人を好きなんて言うあたしは最低だ。
だけどそれでもあたしはどうしても千鶴さんが好きなんだ。
「千鶴さんっ⋯、明日もTrust行って良いですか?」
「ああ。待ってる」
「っありがとう、ございます⋯!」
どうしても、好きなんだ。



