「目、凄い事になってるよ」
アイラインをがっつり引いているあさみの目元は擦ったこともあって真っ黒になっている。
所謂黒い涙ってやつも流れているし。
「誰のせいだと思ってんのよっ⋯」
「うん。ごめん。はい、これで拭いて」
睨んでくるあさみに手鏡とハンカチを差し出す。
「ありがと。でも汚しちゃうからトイレで流して来るよ」
「気にしなくていいのに。でも一回洗った方がいいかも」
「そんなに酷い?」
「十数年前のギャルみたい」
「洗ってくるわ」
「いってらっしゃい」
そう言ってトイレの方へと向かったあさみは顔を隠す素振りを見せず堂々と歩くもんだからすれ違った生徒が驚いた顔をして振り返っている。
今すれ違った子なんて口が開いちゃってるし。
そんな光景にクスリと笑った後、改めてあさみの優しさを思い出し本当にありがとうと心から思った。



