君ありて幸福 【完】




「私は悪くありません!」



泣きそうな表情から強く訴えかけるような表情に変わった。






「この女が千鶴さんに付き纏っているから少し釘を刺しただけです⋯、調子に乗るなって⋯!それの何がいけないんです!?」


「⋯⋯⋯」


「千鶴さんも千鶴さんです!私のことは拒んだ癖にっ、私はずっとあなたが好きだったのに!だから私は────、」





「黙れ」





低く、静かな声。


だけどとてつもなく冷たい声。






「お前の意味不明な話なんか聞いてる暇はねぇんだよ」



「っ、」



「俺の事も雪乃の事もお前には何一つ関係ない話だ」



「それは⋯、」



「お前のした事は全てわかってる。この意味がわかるか?」




真っ直ぐ彼女を見つめる千鶴さんからは冷たさしか感じない。

あたしに向けられている訳では無いのに、その視線、声、雰囲気全てが怖いと感じる。





「お前の家くらいどうとでも出来る」


「っ!」


「お前を退学にする事も会社を潰す事も。一家全員路頭に迷わせることも」


「っあ⋯、それ⋯、は⋯」


「隠れてコソコソ下らねぇ事したんだ。それくらいの事覚悟の上だろ?」