君ありて幸福 【完】



住田と呼ばれた彼女は千鶴さんのどす黒いオーラに一瞬怯んだけれどすぐに柔らかい笑みを浮かべた。




「何ですか?千鶴さん。こんな場所で会うなんて偶然ですね。こちらの方とお知り合いなんですか?実は私も⋯、」




さっきまでの彼女とは全く違った表情と声色にビックリしているあたしを余所に彼女はスラスラと言葉を並べていくけれど




「お前のした事は全部わかってんだよ」



さっきよりも一層低くなった千鶴さんの声にピタッと動きが止まった。





「⋯っ私がした事って⋯一体なんの」


「雪乃を付け回してただろ」


「なっ⋯!」


「今ここで何をしていた?」


「⋯⋯っ」



千鶴さんの鋭すぎる視線に彼女は言葉通り体を固まらせた。

今この場で嘘を吐いてみろ、その後のことはわかってるな?とでも言いそうな千鶴さんの恐ろしいまでの雰囲気に彼女は泣きそうな表情を一瞬見せた後、唇を強く噛み締めた。