ブロロロロとバイク独特の音を立てながらあたし達の近くにバイクを止め、あたしの方へと歩いてくる千鶴さんからは心做しか黒いオーラが出ているような気がして⋯。
「あの、千鶴さ、」
「雪乃」
千鶴さん。と呼ぼうとしたあたしの声は千鶴さんに遮られてしまって、その声はいつもとは違った。
怒っているとも焦っているともとれるような声。
「何もないか?」
「えっ⋯」
「何で電話出ねぇんだよ」
「え、えっと⋯」
「心配かけんじゃねぇよ」
「え、あの、千鶴さん⋯?」
あたしの顔を覗き込むようにしてそう言った千鶴さんだけどあたしには何故千鶴さんが今ここにいるのか全くわからなくてただ間抜けな顔で千鶴さんを見上げた。
「お前が隠してたことは知ってんだよ」
そんなあたしに千鶴さんはこれまた怒ったような困ったような表情をした。
隠してたことを知ってる⋯?
それはどういう意味⋯⋯と考えていると「おい」という凍てつくような今までに聞いたことがないような冷たい声がして一気に血の気が引いた。
けれどそれはあたしに向けられたものではなく、
「住田、どういうつもりだお前」
彼女────、住田さんに向けられたものだった。



