君ありて幸福 【完】




「だから最初に言ったでしょ。“わかってるわ。彼が私とは結ばれないってことくらい。”って」


「⋯⋯」


「あたなとも結ばれないってことよ」


「っ」


「私もその他の女も、もちろんあんたもね」




さっきまで潤んでいた彼女の瞳はもう乾いていて冷たい、温度のない瞳になっていた。




彼女の冷たい瞳が、声が、容赦のない言葉が突き刺さる。




こんなんなら、さっき髪の毛を引っ張られていた方がマシだった。

心が痛いことより物理的に痛みを感じた方がまだまだマシだった。



全然、その方が良かった。