「いくら気に入られていたってそれはその時限りよ、そうよ!一時のお遊びよ!」
「っ」
「確かにあなたは気に入られていたかもしれないけどよくよく考えてみたら彼が本気な訳ないわよね、そうよ、そうだったわ。私ったら何を焦っていたのかしら」
そう早口で言った彼女の目は虚ろだった。
だけど次の瞬間見下すような視線をあたしに向けて、わざとらしく眉を下げた。
「よく考えてみたらあなたは凄く可哀想ね」
「っ、」
「拒まれた私より、可能性を期待させておいて捨てられるんだものね」
「⋯⋯、」
「本当、ざまあないわ」
もう、何を言われても言葉を発することが出来ない。
だって彼女の言う言葉を信じる訳では無いけど、彼女が嘘を言っているようにも見えないから。
千鶴さんに婚約者。
そりゃあ有馬財閥のご子息なんだ。
ありえない話じゃない。
むしろ、決められた人がいることは当然だ。
そうか、そうなんだ。
そうなんだ⋯⋯。



