「っ、痛い!痛い!痛い!」
彼女を誘き寄せる為に人通りのない道を通って帰っていたのが仇になり、大声で叫んでも人の気配は感じない。
「ムカつく、ムカつく、ムカつく、ムカつく」
「離してっ⋯いた、い!」
「ムカつく!ムカつく!もっと痛い思いを味合わせてあげる!」
「っあ、⋯っ」
ギリギリと引っ張られる髪の毛。
痛すぎて声も出ない。
ブチブチと何本も抜け落ちる音も聞こえた。
⋯⋯、何なの、本当に。
彼女の深すぎる、重すぎる愛が爆発してしまった。
最早彼女の感情を愛と呼ぶのかは疑問だけれど。
それでも千鶴さんが好きだと言う感情が根底にあるのは確かだ。
ほんと、ふざけてる。
彼女はある意味すごく可哀想だ。
こんな汚い思いになってしまって。
大好きな人への思いがこんな醜い感情になってしまって。
同情とかではなく本当にそう思う。
彼女は可哀想だと。



