「知ってるのよ、あなたの事は全て」
ニヤリと笑った彼女は淡々とあたしの個人情報を述べた。
「黛雪乃。桜花高校。黛コーポレーションの一人娘。親は離婚して今は社長である父親と二人暮し」
「なんでそんな事⋯」
間違いない情報を告げられて驚くあたしに更に彼女は続ける。
「たまたま千鶴さんとあなたが二人で居る所を見てね。あなたが何処の誰か調べない訳ないでしょう?Trust内の事は適当な男に金を握らせて情報を集めたわ。千鶴さんに色目を使う卑しい人間であるあんたの事を教えてもらう為にね」
「っ」
「Trustの外では最初はあんたに付き纏って情報を集めてたんだけど途中で誰かに追われてる、監視されてる事を気づかれちゃったからどうしようかと焦ったけどいい事を思いついちゃったの」
「いいこと⋯って⋯」
「そう。あんたを付き纏って監視して恐怖を与えることよ。もちろん千鶴さんとTrustから帰る時は私のしている事がバレてしまう可用性があったからつけたりするのは避けたけど、あんたは案外簡単に恐怖を感じてくれた。意外と人に恐怖を与えるのって簡単なのね」
楽しそうに笑う彼女に沸き上がる怒り。
何が恐怖を与えるのって簡単なのね。だ。
あたしがその行為に恐怖を感じている間どんなに怖かったか。
あさみが、楓也さん、昴さん、そして⋯⋯千鶴さんがどれ程心配してくれたか。
皆にどれ程迷惑を掛けてしまったか何も知らないくせに。
そんな事考えも出来ない癖に⋯!



