「雪乃?泣いてんのか⋯?」


少し低くなった千鶴さんの声。

それに姿を見られる事はないのに慌てて手の甲で涙を拭った。



「泣いてませんよ?」

「⋯ならいい」

「千鶴さん、心配掛けてごめんなさい。それと電話ありがとうございます」

「雪乃⋯」

「楓也さんと昴さんにもそう伝えて下さい」

「ああ」

「もう眠いので切りますね」

「ああ」

「おやすみなさい、千鶴さん」




本当は切りたくなかった。

まだまだ話たかったし、声を聞いていたかった。



けど、このままだったらきっと泣いていることに気づかれてしまうと思うからまだ、もう少し、という欲求をぐっと堪えて電話を切った。




その日の夜は中々寝付くことが出来なかった。

そして眠らに落ちるその瞬間まで千鶴さんのことを考えていた。