君ありて幸福 【完】


Trustから出ると外は思ったよりも寒くて思わず掌同士を摩った。



「寒いか?」

「今、一瞬だけ寒くなりました」

「もうすぐ冬だしな」

「そうですね」

「上着着るか?」


そう言われて千鶴さんの服装を見れば千鶴さんはジャケットを羽織っているけれどそれ以外に上着は着ておらずもちろん余分に持っている訳でもない。


それはつまり⋯⋯、




「そしたら千鶴さんが寒いじゃないですか」

「俺はそこまて寒くないから大丈夫だ」




今千鶴さんが来ている上着を貸してくれるってこと。



よくドラマとかで男の人が自分が着ている上着を羽織らせてくれるシーンとかあるけど!⋯あるけど、そんなの心臓もたない。

嬉しすぎるし憧れるけど。

それにあたしが借りたら千鶴さんは中に着ているもの一枚になってしまうし、それは心苦しい。