君ありて幸福 【完】



「雪乃⋯!」



そんなことを考えていると無意識のうちに足が止まっていたのか階段の前で突っ立っていたあたしを千鶴さんが階段の上から呼んだ。


そしてそのまま長い足で階段を降りてくるとあたしの顔を覗き込む。




今朝のことを思い出しゾッとしていたのにその仕草に、近くなったお互いの顔に、ドキンと胸が高鳴ってしまうんだからあたしは本当にどうしようもない。





「どうした?」

「⋯いえ、何でもないです」

「変な顔してた」

「ごめんなさい、ちょっとボーッとしてて」

「⋯なら早く来い」



そう言うと千鶴さんは何も言わずにあたしの手を引いて階段を上った。