君ありて幸福 【完】



「⋯ありがとう、落ち着いた」

あさみが背中を摩ってくれたおかげもあり呼吸も整った。




「取り敢えず、落ち着いたね。⋯それで何で朝から走ったのよ」

「それがねっ!⋯、」


自分も上履きに履き替え、不思議そうに首を傾げるあさみについ、さっき起きた出来事を喋りそうになる。

だけど喉まででかかった言葉をグッと飲み込む。




誰かに見られていたから。

この前も後をつけられた。




⋯そんなこと、あさみには言えない。




「雪乃?どうした?」

「⋯うん、」

「うん?」




きっとあさみはすごく心配する。

それにあさみのことだ。

犯人を突き止めるとまで言いそうだし。



また何もわからない状況だし、あさみに心配はかけられないし、危険に晒したくもない。