「送ってくれてありがとうございました」
「ああ」
「千鶴さんも気をつけて帰ってくださいね、最近寒くなってきましたし風邪も引かないように⋯」
マンション前でそう言うと千鶴さんは優しく微笑んだ。
「ああ。雪乃ももう寒いんだから早く家入れよ」
そしてそう言いながらクシャッと頭を撫でる。
一緒に出掛けたあの日から千鶴さんはこういう風に頭を撫でることが多くなった気がする。
それはいつも不意打ちであたしからしたらビックリするしドキドキするから心臓には悪いんだけどすごく嬉しい。
千鶴さんは頭を撫でるのが好きなのかな?なんて想像してドキドキしたり少し切なくなったりもする。
だけど結局はドキドキが勝つんだ。
今だって触れられた場所から全身に熱が広がっていく。
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
一日の最後に会話するのが千鶴さんというだけで幸せな気持ちになる。
「早く入れよ」
「はい、じゃあまた」
「ああ」
あたしがマンションの中に入るまで見ててくれる。
それすらもすごく嬉しかった。



