マンションの駐車場に停めておいたバイクを千鶴さんが取り出す。
それを見て本当にもうこれでお別れかぁ。と寂しくなった。
「またな」
「あ⋯、」
そう言われてバイクに跨り今すぐにでも走り去ってしまいそうな千鶴さんのシャツを思わず掴んだ。
「雪乃?」
「千鶴さん、あの⋯」
ぎゅっと強くシャツを掴んだあたしを不思議そうに見る千鶴さんに、勇気を出して今日の感謝の気持ちを伝える。
「あの、今日は本当にありがとうございました。楽しい場所に連れて行ってくれて、美味しいものをご馳走してくれて、ぬいぐるみもプレゼントしてくれて⋯綺麗な景色を見せてくれて⋯幸せな時間を過ごさせてくれて⋯本当にありがとうございました」
「急にどうしたんだよ」
「伝えたいんです、ちゃんと」
いきなりお礼を言い出したあたしに戸惑ったような表情をする千鶴さんの目をしっかりと見つめる。
伝えたい。
ちゃんと、あたしの思いを。
伝えたいの。



