君ありて幸福 【完】


その後、近くのレストランで夕食をご馳走してもらい、九時発の電車に乗って最寄り駅に到着した。




「時間大丈夫か」

「大丈夫ですよ」



駅から家までの道のりを千鶴さんと並んで歩く。




「そう言えば、行きの電車で話してたこと覚えてますか?」

「話してたこと?」

「目的地の話ですよ、ヒントは会話ってやつです」

「ああ、あれか」



思い出した様子の千鶴さんは「わかったのか?」と楽しそうにあたしの顔を見た。



「答えはわからなかったんですけど、ヒントの意味はわかりました」

「どういう意味だ?」

「目的地は海ですよね?それは着くまで全然わからなかったんですけど、着いて海の見えるカフェレストランに入ったじゃないですか。その時にピーンときて」



得意気な顔をして、ふふん、と鼻を鳴らす。




「千鶴さん目的地のヒントは会話って言ったじゃないですか」

「ああ」

「あたしあのカフェレストランで青い海を見た瞬間、あの時の会話を思い出したんです」

「あの時って?」

「初めて電話したときの会話です!あの時、空の話したじゃないですか。すごい青空ですねって、晴天ですねって」



あの時、青空だったことを雪乃に言われなきゃ気づけなかったと言われてすごく嬉しかったからよく覚えてる。