君ありて幸福 【完】


ピチャ──。


波音に掻き消されてしまいそうなそんな小さな音を立てながら、ギリギリ足が濡れないところで水に手を浸ける。



「っ!」


思ったよりも冷たい水に一瞬ビクッとした。


だけどビックリしたのも一瞬ですぐに冷たさにも慣れた。




水の中でユラユラと手を揺らす。


ピチャ、ピチャ、と波音とはまた違った心地の良い音が鼓膜を揺らした。