「夕日が綺麗ですね」
地平線の向こうにはまだ半分くらい顔を出している太陽。
そこから伸びる一本の線はオレンジに染まり波打つ度にキラキラと輝いている。
その線だけじゃなく、海全体がキラキラ輝いている。
「少し触って来てもいいですか?」
「服濡らすなよ」
「濡らさないですよ」
からかう様に言った千鶴さんを軽く睨み、腰を上げて波打ち際まで歩く。
歩くたびにシャリ、シャリと音を立てる白い砂は掬ってみれば驚くほどサラサラで指の隙間をパラパラとすり抜けていった。
すり抜けてしまった砂に何故か儚さを感じながら、ザザ──、ザザ────、と安らぐような音のする方へと目線を移す。
キラキラ光る波がゆったりとしたスピードで近づいては遠ざかっていく。



