「うわ~、可愛い」
水槽にはプカプカと浮かぶ小さなクラゲ。
見ているだけで癒されるけれどそう思ったのはあたしだけらしく、
「可愛い?これが?」
「はい!小さくて可愛くないですか?」
「全然わかんねぇ⋯」
千鶴さんはクラゲを可愛いと言うあたしを不思議そうに見ていた。
「クラゲって水母とも書くらしいですよ」
「へぇ」
「クラゲの中?に住んで移動したりする魚もいるらしいです。その他にも色んな海の生き物にとって大切な存在らしいです。ちなみに、このカラフルなハナガサクラゲは綺麗な見た目ですけど毒持ちなんですよ」
「何でクラゲだけそんな詳しいんだよ」
「一時期クラゲが好きだった時がありまして⋯小学校の頃なので詳しいことは忘れちゃったんですけどね」
「へぇ」
その後も我を忘れて⋯は言い過ぎかもしれないけど久しぶりに見たクラゲに時間の感覚を狂わされたあたしはプカプカと浮かぶクラゲを三十分は夢中になって眺めていたと思う。
気がついたら三十分経っていた。
種類も多かったけどクラゲにあんまり興味のない千鶴さんはきっと退屈だっただろう。
「すみません⋯退屈でしたよね」
「別に退屈じゃなかった」
「え⋯?」
「クラゲ見てる時の雪乃楽しそうだったし、雪乃が楽しいならいい」
「っ!」
「豆知識的なのも面白かったし」
自分勝手だったと謝るあたしに千鶴さんはそう言ってクシャッとあたしの頭を撫でた。
その瞬間当たり前のように心臓は速さを増す。
「⋯⋯⋯っやばいよ⋯」
ドキドキし過ぎて顔はきっと真っ赤。
今が水族館で良かった。
薄暗い館内じゃなかったら真っ赤な顔に気付かれているところだった⋯。
不意打ちで千鶴さんはあたしをドキドキさせるから狡い。
本当に、狡い。



