何を話せばいいか、なんてわからなくて。 千鶴さんも口数が多い方ではないから二人きりの車内はほとんど沈黙だったけれど。 その沈黙すらあたしには心地良い時間になった。 「次は────⋯⋯、─────⋯⋯」 暫く電車に揺られていると最寄り駅のアナウンスが流れる。 「次が最寄り駅です」 「そうか」 十数分の長かったような短かったような二人きりの時間が終わりを告げた。