君ありて幸福 【完】





駅まではメイン通りからも裏通りからも行けるらしくその後も裏通りを歩いたあたし達はちょうどいいタイミングでやって来た最寄り駅行きの電車へと乗り込んだ。



もう二十三時を回った電車にはあまり人は居なく、あたし達が乗る車両には他には誰も乗って居なかった。






ゴトンゴトンと電車の走る音だけがうるさく響く車内で千鶴さんと二人きり。


思えば千鶴さんと二人きりになるのは初めてかもしれない。



隣に座る千鶴さんをチラリと盗み見れば相変わらず息を飲むほど美しい顔がそこにはあって、ただ顔を見たそれだけなのにバクバクと心臓が暴れ出す。





緊張、する。




静かな車内、隣通し、二人きり。




ドキドキと鳴る心臓の音が千鶴さんに聞こえてしまわないかと心配になる。