「お前⋯」
厨房へと戻って行く寛治さんを見ていると向かいの席に座っていた千鶴さんの声にハッとした。
「ごめんなさい千鶴さん!泣き出すなんて本当に⋯お見苦しいところを⋯あの、」
寛治さんはああ言ってくれたけど千鶴さんからしたらいきなり泣き出す意味のわからない女だ。
それに千鶴さんだって食事中なのに、これはもう失態だ。
「本当にごめんなさい⋯」
変な奴だと思われても仕方ない。
と思ったけれど、
「謝ることじゃねえだろ」
千鶴さんのそんな言葉が聞こえて思わず俯いていた顔を上げれば──────
「⋯!」
ほんの僅かだけど千鶴さんが笑っていた。



