「美味しいです、すごく、すごく、すごく。本当に⋯、誰かの手料理なんて久しぶりで⋯、こんなに温かいんだって、こんなに美味しいんだって感動してっ⋯、だから、⋯ありがとうございますっ⋯寛治さん、千鶴さんっ⋯」
ボロボロと泣くあたしを千鶴さんは、寛治さんはどう思ったかな?
呆れたかな?
そう心配になるけどやっぱり涙は止まらない。
「ありがとうな、お嬢ちゃん」
寛治さんの優しい声が聞こえて顔を上げればこれでもかってくらいに目尻を下げて、しわくちゃな顔を更にしわくちゃにした寛治さんが嬉しそうに笑っていた。
「⋯寛治さん、」
「腕に自信はあったけど泣かれたのは初めてだ。嬉しいよ、本当に。美味しいって、温かいって言われるのが俺は一番嬉しいんだ。だからありがとなお嬢ちゃん」
「っあたしの方こそこんなに美味しいお料理ありがとうございますっ⋯」
「ゆっくりして行きなさい」
最後に二回あたしの頭をポンポンと撫でた寛治さんはそう言って厨房の方へと戻って行った。
大きくてシワだらけの手はお料理と同じでとても優しく温かかった。



