君ありて幸福 【完】



席に座ったあたしはナポリタンを頼み、千鶴さんは煮込みハンバーグを注文した。






「あの爺さんがカンジイ」


出来上がりを待っている間、厨房にいるお爺さんを見ながら千鶴さんが言う。



「カンジイ、って名前ですか?」

「ああ。寛治って名前であだ名がカンジイ。ちなみに梓の祖父さん」

どうやらカンジイというのはお爺さんのあだ名らしく、梓さんのお祖父さんらしい。


「そうなんですか?」

「ああ」

「確かに目元とか似てますね」

梓さんは銀髪で一見怖く見えるけど実はタレ目で可愛らしい顔をしている。

それに笑ったときの爽やかな感じや温かい感じも似てる気がする。


「元々ここは楓也の行き付けで、楓也と昴と前にここに来た時梓がここで爺さんの手伝いをしててそれを見てTrustのバーテンダーとして働かないかって誘ったんだ」

「へえ⋯」

意外な繋がりに驚いていると寛治さんがナポリタンと煮込みハンバーグを運んで来てくれた。






「美味しそう⋯!」


ナポリタンはとてもシンプルだけどソーセージや玉ねぎピーマンと具沢山で、千鶴さんの煮込みハンバーグもソースがグツグツしていて、美味しそうな香りが漂ってくる。


「うちのナポリタンはこの辺じゃ一番だからね、きっと美味しいよ」

「本当に美味しそうです。いただきます」


自慢げに笑う寛治さんに見守られながら、ナポリタンをクルクルとフォークに巻いて一口、口へと運んだ。