君ありて幸福 【完】



Trustを出てから十分ほど歩いたところでメイン通りから一本裏路地に入ると小洒落た小さな喫茶店があった。

そして千鶴さんがその喫茶店のドアを開けるとカランカランと鈴のような綺麗な音がなった。




「おー、千鶴か。⋯おや?アイツら以外と来るとは珍しいね」



千鶴さんに続き喫茶店の中に入ると厨房の奥から年配の、白い口髭が特徴的なお爺さんが出てきた。



「よお」

千鶴さんはそう言うとさっさと窓際の席へと座ってしまう。



「こ、こんばんは」

入口の近くに残されたあたしはお爺さんに会釈をした。

「こんばんは。ゆっくりして行きなさい」

するとお爺さんは優しそうな目元を下げて、穏やかに笑った。


その笑みは本当に本当に優しそうで、心が温かくなった。