君ありて幸福 【完】




Trustを出ても向けられる好奇や憎悪が混ざった視線。


あたしみたいなのが千鶴さんの隣に居たらそりゃそうなるだろうけど、やっぱり嫌な気持ちになる。

居心地が悪くて恥ずかしくて申し訳なくて俯いてしまいそうになる。


だけど、それでも。




「何か食べたいもんあるか?」



引かれた手が離されてしまったとしても。

千鶴さんがあたしの目を見てそうやって言ってくれるだけで単純なあたしは嬉しいって思ってしまうんだ。




「あたしは何でもいいですよ。千鶴さんは食べたいものありますか?」

「俺も何でもいい」

「食べたいものがあったから出てきたんじゃないんですか?」

「いや⋯」

「⋯?」

何か目的のものがあるから外に出たのかと思ったんだけど⋯。
どうやらそれは違ったみたい。



「⋯何でも良いなら、カンジイのとこ行くか」

「カンジイ⋯?」

「ああ。古びた喫茶店だけど、そこで良いか?」

「はい」

カンジイが人の名前なのかお店の名前なのかそれとも全然違うのかわからないけど取り敢えず喫茶店に行くことになった。