取れた⋯って。何が?
千鶴さんの手が髪の毛から離れたこともあり強く瞑った目をゆっくりと開けるとさっきまで近くにあった千鶴さんの顔はもうそこにはなく、横を見れば普段通りソファに腰掛ける千鶴さんがいた。
「あの、千鶴さん⋯?」
そんな千鶴さんに戸惑いながら声を掛ける。
「あの、さっきのは⋯」
「さっきの?」
「髪の毛に⋯手を⋯」
さっきの出来事は夢なんじゃないかってくらい無表情の千鶴さんはあたしの言葉に「ああ」と言ってあたしの髪の毛へと視線を移した。
「ゴミ。ついてたから」
「ゴミ、ですか?」
「ああ」
「⋯ありがとうございます」
「ああ」
⋯⋯どうやら千鶴さんはあたしの髪の毛についていたゴミを取ってくれたらしい。
なんか、色んな意味で恥ずかしい。
好きな人の前で髪の毛にゴミつけてるし、それを気づかれるし。
すごく恥ずかしいよ。
「⋯⋯、」
それに⋯。
一人でドキドキして、馬鹿みたい。
あたしがドキドキして仕方なかった時千鶴さんは表情一つ変えずに、今だって特にいつもと何も変わらない。
わかってる。千鶴さんにとってあたしはなんでもなくて、女の人に触れることなんて何の意味もないってこと。
わかってる。完全にあたしの片思いだってこと。
それなのに傷ついてしまうあたしは、何かを望んでしまっているんだろうか。
もしそうなのだとしたら、怖い。
すごく怖いと思った。
絶対に届かない人だから───────。



