君ありて幸福 【完】




「地味って、悪口じゃないですか?」


いきなり地味呼ばわりされてムッとしながら昴さんを睨む。



「自分で言ったんじゃねーか」

「自分で言うのと人から言われるのは違います」

「事実だろーが」

「なっ⋯」



それだけを言い逃げして昴さんはもう会話しないとばかりにフロアの方へと目を向けて煙草を吸い出してしまった。


この人、失礼だ⋯。


だけど、前とは違って昴さんの雰囲気から拒絶が感じられなくなったことは嬉しいことなのかもしれない。



もちろん失礼なことには変わりないけれど。






なんて考えているとスっと千鶴さんの手があたしの髪の毛に触れた。



「⋯っ!」



覗き込むようにあたしを見る千鶴さんに、
伸ばされた手に、


鼓動が速度を増した。