君ありて幸福 【完】



「ピアスってお洒落だしお店とかで可愛いなって思うことも多いんですけど⋯、つけるには穴開けないといけないじゃないですか。開けちゃえば一瞬なんでしょうけど痛いのとかすごく苦手で⋯、だから怖いんです」




奇怪そうにあたしを見る千鶴さんに正直な理由を告げると千鶴さんはますます訳の分からない、という表情であたしを見た。




「痛いのうちに入るか?あんなの」


そう言った千鶴さんにとってはピアスの穴を開けることなんて痛いの内に入らないんだろう。

だけど痛みなどに滅法弱いあたしにとったらあれは恐怖だ。
体に穴を開けるんだもん。

だけど、


「憧れはあるんですけどね」


お洒落なものも多いし、実際あさみがピアスをしていたりするとお洒落だな、可愛いなって思うし。



「ならイヤリングとかイヤーカフとかあるだろ」

「そうなんですけど、あたしなんかがお洒落してもなーって⋯感じじゃないですか⋯」



穴を開けることが怖いのもあるけどこれもある。
だからイヤリングとかもつけたことは一度もない。





「だからオメー地味なのか」




会話を聞いていたのか横から昴さんが口を挟んだ。