君ありて幸福 【完】




今は夜の七時。


あたしは今日もTrustに来ていた。



「何か様子変じゃない?」

「そんなことないよ⋯」

「⋯そ?」

「うん」

「なら入るけど」

「うん⋯」



奇怪そうにあたしを見るあさみに平静を装って頷く。





本当はすごくドキドキしてる。


千鶴さんに会えるからという良い意味のドキドキと

昨日の光景が蘇って苦しい動悸のようなドキドキと。


そのどちらもがあたしの心臓を猛スピードで動かしている。





会いたい、好きな人に。


会いたくない、届かないとわかっている人に。


会っちゃいけない、自分がおかしくなりそうで。






だけどやっぱりあたしは




───────⋯⋯会いたい。




あさみに続いてTrustのドアを潜り抜けた。