「ただいま⋯」


電気もついていない暗い部屋にそう告げても当然返ってくる声はない。


パチっとリビングの灯りをつければTrustに行く前に見た光景と何も変わらない、テレビのリモコンもティッシュ箱も一ミリも変わっていない部屋。



今日もお父さんは帰って来ていない。


それにはもう慣れたしお仕事が忙しいから仕方ないんだろうけど、でも、今日は⋯。


そのいつもの光景にさえ気分が沈んでしまう。





女の人と寄り添うように歩く千鶴さんの姿が頭から離れない。



『一回でいいから寝てみたいなぁ』


あの言葉が何を意味するのか、あの後あの二人が何をするのか。


あたしでもわかる。

わかってしまう。




「やだ⋯」



どうしてこんなに苦しいのか、心が痛くなるのか。