「そろそろ雪乃ちゃん達帰る時間?」
千鶴さんが有馬財閥の人だと知り驚いていると腕時計に目をやった楓也さんが尋ねた。
「あっ、本当だ。そろそろ帰りますね、行こ雪乃」
あさみも時間を確認するとバッグを持ち立ち上がる。
つられてあたしも立ち上がった。
「千鶴さん、あたし達帰りますね」
「ああ」
「楓也さん昴さん、ありがとうございました」
「またね」
優しく笑う楓也さん、昴さんは何も言わなかったけれどチラッとだけあたしの方を見てくれた。
「千鶴さんもありがとうございました」
「ああ。またな」
そして千鶴さんは少しだけ口の端を上げて笑ってくれた。
それがすごく嬉しくて⋯、だけど、この時あたしは僅かな違和感を覚えた。
昨日も感じた、違和感。
その違和感の正体を、あたしは翌日知ることになる。



