イタリアから出られない!

ルカさんは、ヴェネツィアからほとんど出たことのない私を、他の街に連れ出して、有名な観光地を案内してくれる。

「これがトレビの泉だよ」

「わあ!彫刻がとっても素敵ですね!」

「海の神ネプチューンの神話をモチーフにしてるんだ」

「そうなんですね。どんな神話か帰ったら調べてみます!」

ルカさんは観光地の歴史などに詳しくて、でもうんちくばっかり喋るわけじゃないから聞いていて楽しい。それにエスコートがとても上手だ。

「待って、俺が開ける」

「あ、ありがとうございます」

レストランなどのドアは必ずルカさんが開けてくれるし、椅子まで引いてくれるから、何だかお姫様になったみたいだ。重いものは自然と彼が持ってしまうし、段差があれば手を差し出してくれる。そして、そのたびにドキドキしてしまうんだ。

「これって……この気持ちって……」

ルカさんとお出かけした後は、いつも王子様みたいにエスコートしてくれるルカさんを思い出してしまって、どれだけ疲れていても眠れない。ドキドキしすぎて、心臓が止まってしまうのではと思うほどだ。