イタリアから出られない!

「なかなか、言うことを聞いてくれない奴もいて大変だけどね」

「でもすごいじゃないですか!私には絶対無理なので、尊敬します」

「翠はイラストレーターやってるんだっけ?よかったら、俺の顔を描いてくれない?」

「全然いいですよ!」

俳優のように整っていて、とても華やかな顔を描くのは緊張する。創作で自分のオリジナルのキャラを描くことはあっても、現実世界にいる誰かの顔を描くなんて初めてだ。

「何だか、繊細な建築物を描く以上に緊張してます」

「どうして?」

どこか意地悪な笑みを浮かべるルカさんに、胸がキュッと高鳴る。あれ、この気持ちは何?

「ル、ルカさんがかっこいいからですよ……」

顔が自然と赤く染まり、恥ずかしい。小声でそう言いながら逃げるようにスケッチブックに目線を向けると、イタリア語でルカさんが何かを呟くのが聞こえた。でも、早口で聞き取れなかったけど……。

そこへ、頼んだコーヒーとスイーツが運ばれてきた。ルカさんはブレンドコーヒーとティラミス、私はカプチーノとパンナコッタだ。