イタリアから出られない!

「俺は、ルカ・スチュアート。君、日本人?」

「はい。相澤翠と言います」

「なら、日本語で話した方がいいか?イタリア語まだ慣れてない感じがするし」

ルカさんの口から流暢な日本語が出てきたことに驚く。日本語って世界の数ある言語の中でも難しい方なのに……。

「日本語、とてもお上手ですね。驚きました」

「うん、その顔見てたらわかるよ。日本語は知人に教えてもらって覚えた」

それより、と言いながらルカさんは私の手をそっと自身の手と絡め合う。先ほどの男性に触られた時より嫌な思いがしないのは、ルカさんに助けられたからだらうか。

「一緒にお茶でもしたいなって思ってるんだけど、どう?」

「はい、ご馳走様させてください」

ナンパから助けてもらったお礼がしたかったため、ルカさんと私は近くのおしゃれなカフェへと入った。



カフェで、それぞれコーヒーとスイーツを注文し、テラス席で話をする。ルカさんは親の仕事を継いで、多くの人を引っ張っていっているらしい。