イタリアから出られない!

「あの、ルカさん、ここはどこですか?」

この部屋には窓がなく、唯一の出入り口である扉はやけに分厚い。ホテルなどではないということは一瞬で理解できた。

「ここは翠がこれから住むところだよ」

「えっ?」

「だって、翠はもうこの場所以外に行けるところがないんだから」

そう言い、ルカさんは私を軽々と抱き上げてソファへと移動する。そしてテレビをつけると、そこには私の顔写真が映し出されており、スーツを着たニュースキャスターが何かを話している。でも、何を言っているのか理解できない。

しばらくすると、海の映像が映し出されて警察官らしき人たちが忙しそうに動き回っている。何?何が起きているの?

「君はね、海に飛び込んで自殺したことになってるんだ」

「えっ?」

嬉しそうに話すルカさんの言っていることが理解できない。自殺したことになっている?どういうこと?

混乱する私の頬を、ルカさんは優しく触れる。そして私のおでこに口付け、笑った。