初めてやって来た高松駅では「瀬戸の花嫁」のメロディが流れていたので

(本当に流れてるんだ…)

などと、妙に感心した。

私は、自分の本当の気持ちに真っ向から向き合うため、かつて春樹に誘われていた四国をふらりと一人で旅している最中だ。

心配かけてしまう気もしたけれど、ケータイはずっと機内モードのままにしてある。


春樹から教えてもらった、エンジェルロードにも行ってみた。

恋人たちばかりで、私だけひとりぼっち。

それを抜きにしても、やはり絶景だ…本当に美しいと思う。

こんな素敵な景色なら、写真じゃなくて、実物を春樹に見せたいし、一緒に見たい。

春樹、職場ではドライすぎて怖いなんて言われていたけれど、実はかなりロマンチストでウェットだってこともわかってきたし、もしかしたら絶景に感動して泣いちゃうかも。

それとも、いつもみたいに、はしゃいでじゃれあって、他では見せないような優しくて眩い笑顔で微笑みかけてくれるかな。

二人ともSNSはしないから、ここで撮った写真は二人だけの大切な想い出の1枚に加わるだろう。

早く、あの優しくて艶のある美声で名前を呼ばれたい。

今まで、自分の名前があまり好きじゃなかったけれど、春樹に名前を呼ばれると、名前も、不甲斐ない自分のことさえも、少しずつ好きになれた。

逢いたい、春樹…。






あれ…?